1.ご縁ありまして。1.この島と暮らす、きみのこと。薄く開いた出窓から、網戸越しに聞こえる蝉の声に目を覚ます。露に湿った草花の匂いが僅かに涼しさを運んでくる、ようやく季節は十月。ここではいまだ蝉が鳴き、一年の大半はTシャツで過ごせてしまうので、暦の上の出来事だけではあまり実感が湧かなかったりもする。少し前まで、携帯のアラームを五回鳴らしてようやく七時に目を覚ましていたが、今となってはアラームを掛けずとも六時前には起床出来ているから不思議だ。日本列島を南に下った所、沖縄県の少し手前。本土とも沖縄とも明らかに異なる文化や風習が、色濃く息づく程よく手狭な離島。叶曜(かのうひかる)は、そこで生まれ十八の年の頃まで育まれた。島に暮らす子供たちの大半は、思春期を過...28Oct2020originalnovels.